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【報告】2016年度英国遠征活動活動報告 北田海人

【報告】2016年度英国遠征活動活動報告 北田海人

2017年卒業生の北田海人です。現役時代は、主に広報の土台作りとしてHPリニューアルに関わらせていただいておりました。現在は本学の法科大学院に在籍しております。

今回は、2/14~3/14の一ヶ月間、英国遠征についてレポートしていきたいと思います。

(もちろん剣道だけではなく観光もしましたが、今回は剣道を中心に書かせていただきます)

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【今回のプログラムについて】

本剣道部の小川監督とカンタベリーにあるケント大学剣道部のゼノン裕監督の間で提案された、新しい交流プログラムであり、各大学の生徒をそれぞれの大学剣道部に派遣し、剣道を通じた交流を目的とするものです。

私たちは、そのプログラムの第一期生として参加させていただくこととなり、ケント大学剣道部だけではなく、イギリス各地の剣道家たちとも稽古と交流、さらには剣道世界選手権大会のイギリス代表の合宿・イギリスでの試合にも参加させていただきました

【剣道交流について】

 イギリス各地の道場での稽古

スタートをエジンバラからにしたため、イギリスを縦断する形になりました。ゴールはカンタベリーであり、距離にしますと約681キロになります。その間、マンチェスター・リバプール・ヨーク・オックスフォード・ロンドン・エセックス各地で稽古をしました。

剣道はオリンピックの種目ではありませんし、他のスポーツや武道のようにテレビで中継されることが滅多にありませんが、ヨーロッパにおいて剣道は人気の武道の一つです。もちろん、イギリスでも剣道は盛んで、各地に道場があります。
今回参加させていただいたロンドンの虎道場では、様々な国から剣道家が集まっており、毎回30人以上が稽古に参加している大きな道場でした。また、エセックスの道場は、新興の道場でしたし、リバプールの道場は初心者から高段者までさまざまな年齢層・レベルが集まった道場でした。

 「打つ」は「HIT」?

イギリスで最初に稽古をしたマンチェスターの道場で、一番困ったことが稽古中の「英語で説明」する時でした。もちろん、英語が全くできないわけではないのですが、何が困ったかといいますと、「足さばき」「中心」「左足の引き付け」など、剣道ならではの日本語を英語で説明することでした。実はこういった、いわゆる剣道用語である「足さばき」「体当たり」「返し胴」など、日本語のまま通じるものもあります。ただし、稽古でよく指導される「もっと大きい声を出せ!」が、「声」を「VOICE」とは言わないので、通じません。「KIAI(気合)」になります。剣道の本質を捉えた英語表現(英語なのか日本語なのかどちらなのでしょうね)であると、非常に感心しました。ほかにも、「打突」や「打ち」は、「CUT」となります。つまり日本刀の「斬る」という竹刀で打つという動作の本質を捉えているのです。
これらのような(日本語的な)英語はまだいいのですが、「一歩前に出る・下がる」「二段打ち」がとっさに英語で出ないのです(もちろん私の英語不足もあります)。ほかにも、「中心をとる」「手の内を使った’冴え’のある打ち」などなど・・・
では、説明できないまま一か月も過ごしたのかといいますと、そうではありません。動作を身振り手振りで説明しながら、「Step forward. OK」といった要領で、なるほどそう言うのか、というように学習していきました。
なんとかしゃべれるようになり、こちらも勢いづいてき頃には、帰国日に・・・。上手くいかないものです。

 大学での稽古

ケント大学だけではなく、ヨーク大学・オックスフォード大学剣道部とも稽古をさせていただきました。「日本の大学の部活ほどは・・・」と謙遜されていましたが、とんでもありません。しっかりした素振りからスタートし、基本稽古・技の稽古・地稽古と、大変充実した内容の稽古でした。両校はイギリスでも強豪校であり、下記のUNI大会では、個人戦団体戦とも両校で優勝を争っておりました。ここでできた友人には、町や大学を案内していただいたりと、お世話になりました。本当に楽しい時間をすごくことができました。今年の夏から秋にかけて両校から数名、日本に来られるとのことです。また会えることを楽しみしています。また本剣道部での稽古に参加されますので、現役の学生の皆さんにとっても、イギリスの学生と交流できるチャンスです。

 スクワッド・トレーニング

バーミンガムでは、なんとイギリスの剣道世界大会代表の合宿、通称スクワッド・トレーニングに参加させていただくことができました。土日の二日間、イギリス代表チームの監督である樋山先生の指導のもと、基本稽古から練習試合まで厳しい合宿が行われ、イギリス代表や候補生がイギリス各地から集まりました。
現在イギリス剣道界では、若手を強くして試合に出場させようという動きがあるそうです。下は高校生も参加していましたが、勢いとスピードのある剣道で、日本の高校生と比べても遜色はないと感じました。もちろん、今の世界大会メンバーの試合経験や技は豊富で、レベルの高い練習試合・強化稽古をさせていただきました。
世界大会におけるイギリス剣道代表チームの活躍を日本から応援しています。日本で強化稽古・練習試合を組んでいただければ、同志社大学剣道部が力になります。

 UNI大会

ケンブリッジでは、UNI大会(全日本学生選手権大会に相当する大会です)の試合の審判をさせていただきました。今大会では、それまで各地で稽古をした学生と再び会うことができ、また、彼らの試合を間近で見ることができて、非常にうれしかったです。彼らから、「なぜ審判をしているの?試合に出て、日本の学生の試合が見たい」といわれ、私たちの試合が見られないことに関して、残念そうでした。来年以降の学生は、オープン大会等に合同チームを組んで出場することも是非、視野に入れて交流していただきたいと思います。

【イギリスの剣道家】

 日本人よりも「日本人らしい」イギリス人

イギリスで剣道をして、また、彼らと話して感じたのは、彼らは「日本人よりも日本人」だということです。変な表現ですが、これが一番しっくりくる表現だと思っています。

彼らと稽古をしていますと、熱心にアドバイスを求めてきます。出小手はどう打てば一本になる?あのyoutubeで見たあの選手の技はどうやって打っているの?など、具体的な質問が稽古中だけではなく、休憩時間やパブでお酒を飲む時まで、いつでも質問が飛んできます(ある時は、朝の4時まで剣道の話をしたことも!)。

また、日本のやや試合剣道だけに取り組みがちな稽古に比べますと、剣道形への取り組みも非常に熱心で、(これには本当に驚いたのですが)剣道家に形が7本目までできるか質問したところ、できない剣道家はいませんでした。
インターネットによって、youtubeなどの動画配信サイトが普及したことで、海外でも強い選手や強豪校の試合を見ることができるようになったこともあり、彼らはいろんな選手や強豪校を知っていて、あんな剣道がしたいあんな技が打ちたいと、非常に強いあこがれを持ちながら、どうやって打っているか足を動かしているか、スロー再生コマ送りを使ってまで研究していました。彼らは「もっと若い時に剣道を始めたかった」「若手に剣道を教えられる先生がほしい」「僕たちは指導者に飢えている。もっともっといろんなことを教えてほしい」と口々に言っていました。
さらには、剣道だけではなく、居合道・弓道・空手などの他の武道もやっていたり、茶道にも詳しかったり、禅について研究している方まで・・・。ある方は「僕はなぜイギリスで生まれてしまったのだろう?日本で生まれるべきだったね」とまで言っておりました。

彼らは本当に剣道が好きです。日本では試合での勝ち負けを重視してしまう意識、大学卒業と同時に剣道も卒業してしまいがちです(もちろん、本学の剣道部では剣道では日本一になるために日々稽古を積み、社会人になると忙しくて剣道する暇がないという日本と外国との社会システムや働き方といった違いもあります)。彼らは本当に「日本人らしい」と感じました。非常に知見が深く、考えて剣道に取り組んでいる点に感激しました。
彼らの悩みの一つに、「日本のように剣道を子どもの時からできなかったけど、強くなることができるだろうか?」といったものがあります。これはよく聞かれましたが、強くなるためには稽古を継続することにあるとお答えしました。実際、日本でも大人になってから始めて、高段者になられた方も大勢いらっしゃいます。そして、このような情熱を持っている剣道家が上達しないはずがありません。

剣道は、日本から世界各国へ広まっていきましたが、彼らの剣道を学ぶ姿勢・取り組む姿勢には、日本人にも学ぶことがあると強く感じました。

【さいごに】

 感謝

私たちを宿泊させていただきましたイギリス現地の方、稽古をしてくれた方、話してくれた方々や、案内などお世話をしていただいた方々、友人たち、そして同行してくれた同期の久保。さらに、遠征に行くか悩んでいた私の背中を押し応援してくれた両親と、今回の遠征をサポートしていただきました小川監督とケント大学の裕先生。ありがとうございました。本当に貴重な体験でした。一ヶ月で剣道をしながらイギリスを縦断するなんて経験、一生ものです。心から感謝しています。

 後輩たちへ

本剣道部での新規プログラムであるイギリス遠征は、非常に価値のあるプログラムです。剣道を通じて、日本とは異なる文化に触れることができますし、同世代の学生と友達になることもできます。言葉を選ばずに言いますと、「価値観がぶっ壊れます」。せっかくの大学生活ですから、日々の稽古も大事ですが、部活があるからとあきらめず、この機会を利用して、海外に行ってみましょう!特に、1、2回生のうちに行くことをお勧めします。
英語に対する不安をはじめとするいろんな事情があるかと思いますが、ぜひチャレンジしてみてください。何か聞きたいことがありましたら、遠慮なくご相談ください。お待ちしております。
ぜひとも、来年度以降も途切れることなく、イギリス遠征と交流が続きますよう、願っております。

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